子どもケミネット

呼びかけ文

「有害化学物質から子どもを守るネットワーク(略称子どもケミネット)」(仮称)設立の呼びかけ(2023年2月27日)

●発達障害の増加
 いま、発達障害児が増えています。文科省のデータ(令和2年度)によれば、小・中・高等学校で特別支援学級の在籍者及び通級指導を受けている児童・生徒のうち、「注意欠陥多動性障害」・「学習障害」・「自閉症」・「情緒障害」児の数は284,946人にのぼっています。
 通級指導を受けているこれらの発達障害児に関しては、その統計が始まった平成18年度と比較すると12倍以上になっており、この間ずっと上昇傾向が続いています。特に、「注意欠陥多動性障害」については、平成18年度の20.7倍、「学習障害」については22.7倍と、著しく増加しています。
 また、昨年文科省が行った小・中・高等学校の通常学級の児童・生徒中の発達障害と疑われる者の割合は、8.8%にのぼりました。前回調査(2012年)では6.5%でしたので、明らかに増加傾向にあります。

●生殖危機の進行
 また、「生殖危機」と呼ばれる現象も深刻化しています。不妊・流産が増える一方で、出生男児の停留精巣・尿道下裂などの男性器異常が増加しています。米国マウントサイナイ医科大学のスワン教授の研究によれば、世界中で精子が減少しており、欧米諸国では過去約40年間に52.5%、アフリカ諸国では73%も減少していることが報告されています。
 日本でも、出生児数は年々低下傾向で、厚労省の人口動態統計速報によれば、2022年は初めて80万人を割る見通しです。低下傾向に歯止めがかからない状況です。

●原因としての化学物質のホルモンや脳神経系等のかく乱作用
 このような2つの異変に共通する原因として、体内のホルモンや神経伝達物質による情報伝達をかく乱する人工の化学物質―内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)や脳神経系をかく乱する有害化学物質―の関与が指摘されています。シーア・コルボーンらの共著書『奪われし未来』(翔泳社、1997年)が、初めてこの問題を警告した本として知られています。この本の出版を契機として、世界中で研究が進められ、内分泌かく乱化学物質や脳神経系をかく乱する有害化学物質に関する世界中の研究を評価したWHOの報告書(2012年)では、このような化学物質による内分泌かく乱作用によって人や野生生物に悪影響を及ぼすおそれがあることは、単なる仮説にとどまらず、科学的事実として受け止められています。特に、初期発達への影響は、多くの場合不可逆的であり、ライフサイクルの後期まで明らかにならない可能性があることについて、重大な懸念が呈されています。そして、この報告書の後も、内分泌かく乱物質など有害化学物質が人や野生生物へ悪影響を及ぼすことを示す研究論文が日々蓄積されている状況です。

●「環境ホルモン空騒ぎ」論の台頭と政府の失策
 日本でも、1997年に前述の『奪われし未来』が翻訳出版されると、大きな社会的関心を集め、種々な市民団体が立ち上がりました。環境省も、1998年5月に研究計画を策定し、積極的に取組む姿勢を表明しました。ところが、これに対して、産業界寄りの学者やジャーナリストを中心として、「環境ホルモン空騒ぎ」論が新聞・雑誌などに相次いで掲載されるようになったのです。その後環境省が「一部の物質の魚類への影響が認められたが、人間への明らかな影響は認められなかった」との試験結果を公表すると、これがさらに「空騒ぎ論」を助長しました。そして、環境省自身も、このような声に押される形で、環境ホルモンリストを廃止するとともに、研究計画を縮小せざるを得なくなったのです。そして、このような流れの中で、環境ホルモンへの社会的関心の高まりは「根拠のない騒動(空騒ぎ)」とされ、大した問題ではなかったかのような印象を残してしまいました。しかし、それが誤りであったことは、既述のとおり、その後の世界の研究結果やWHOの報告書からも明らかです。
 では、なぜ、環境省の試験では人間への有害影響が出なかったのでしょうか?実は、環境ホルモンは新たに発見された毒性なので、その試験には新しい試験法の開発が不可欠でした。環境省の実験は、国際標準の試験法が開発される以前に、ひとつのトライアルとして行われたものにすぎません。もしかしたら、試験法そのものに問題があって結果が出なかったのかもしれません。そもそも、たったひとつの試験法で問題が出なかったからといって、安全であると断定できるはずがありません。それにもかかわらず、「大した問題ではない」として早々に幕引きをしてしまった政府の姿勢にこそ、問題があったことは明らかです。

●EUでは環境ホルモン規制が始まっている!
 一方、EUでは、その間に、環境ホルモンによる人や野生生物への悪影響を示す研究結果が積み重なり、予防原則に立脚して規制を求める市民の声が高まってきました。その結果、2018年から農薬についての環境ホルモンの使用禁止の規制が始まりました。今後、化粧品や消費者製品にも規制対象を拡大することが予定されています。実は、EUが環境ホルモンについての研究計画を策定したのは、日本より1年遅れの1999年でした。しかし、日本が「環境ホルモンは終わった」として対策を停止している間に、EUは日本を追い越し、世界で最初の環境ホルモン規制の導入を実施したのです。

●今こそ、市民の力を結集しよう!
 いったい、この違いはどこにあるのでしょうか?それは、前述の「環境ホルモン空騒ぎ」論の台頭による日本の政策の転換によく表れています。つまり、政策決定にあたっての産業界の影響力の大きさが、EUと日本とでは著しく違っているのです。しかし、それは、逆にいうならば、「市民の力」の差に他なりません。
 25年前、環境ホルモンの危機を知って、私たち市民は立ち上がりました。しかし、前述のとおり、産業界の反撃攻勢の前に、私たちは押し戻され、立ち止まったまま、今日に至っています。もちろん、EUでも、産業界の抵抗がなかった訳ではありません。それは科学者間の科学論争にまで発展しました。しかし、市民の力が強大であったことから、論争を突破して規制が実現されたのです。
 既述のとおり、いま、子どもたちの発達や健康は、重大な脅威に直面しています。このまま日本政府が無策を続けるならば、子どもたちに取り返しのつかないことになりかねません。私たちは、このまま立ち止まり続けている場合ではありません。一刻も早く、子ども達を守るために、再び立ち上がらなければなりません。
 幸い、「科学」に国境はありません。環境ホルモンの有害性を示す科学的根拠は世界共通です。私たちは、これらの世界の研究成果から学び、それに基づく政策の実施を政府に強く求めることができます。
 また、近年、有害化学物質管理については、国際的な調和が求められています。EUでの規制導入の開始は、その他の国々の政策にも影響を及ぼすことは必至です。日本における環境ホルモンや農薬など有害化学物質規制の計画的導入は、産業界の究極の利益にも適うはずです。
 今こそ、私たち市民団体・個人は、力を結集し、共に世界の国々や内外研究者に学びつつ、一丸となって、子どもたちの危機を回避するための規制の実施を立法、行政に強く働きかけることが求められています。そして、そのための組織として、「有害化学物質から子どもを守るネットワーク(略称子どもケミネット)」(仮称)を設立することを提案します。
 趣旨に賛同される多数の皆様のご参加をお待ち申し上げております。

「有害化学物質から子どもを守るネットワーク(略称子どもケミネット)」(仮称)
設立準備会

中下 裕子 (ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 代表理事)
日高 容子 (一般社団法人グリーンコープ共同体 代表理事)
高橋 千佳 (生活協同組合あいコープみやぎ 理事長)
辰巳 千嘉子 (コープ自然派事業連合 副理事長)
細谷 みつ子 (京都高齢者生活協同組合くらしコープ 常務理事)
中地 重晴 (有害化学物質削減ネットワーク 理事長)

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